『恵子、お母さんは待っていますよ!』第1章 ロンドンからの手紙1

 今年(平成12年)春先、東京三菱銀行ロンドン支店から一通の英文の手紙が有本家に届いた。

母嘉代子さんは「娘に関する事だ」と直感したという。

愛娘恵子さんは昭和五十七年四月、「半年だけ」と言い残し親元を離れロンドンへと旅立った。

十八年の歳月を経てもなお、母の目にははっきりと面影が映っているのだろう。

恵子さんの『実像』を語る母の傍らで涙を堪える父明弘さんの姿がそれを如実に物語っている。

十九歳の女性が語学留学を夢見るのは当時でも珍しくはない。

しかし彼女の場合はそんな恵まれた話ではなかった。

両親は渡航を決して許さなかったのである。

彼女は神戸外国語大学の二部に通いながらアルバイトですべてを賄おうと必死だった。

大阪の国際語学センター(現在閉鎖)の学費もすべて自分で捻出した。(つづく)